日本酒「IMABARI HERITAGE 1831」ができるまで
八木酒造部 代表取締役社長 八木伸樹様
1831年(天保2年)創業。「山丹正宗」の醸造元として、愛媛県産の酒米、今治の清冽な伏流水、そして越智杜氏伝承の技を生かした酒造りに定評がある今治唯一の酒蔵。伝統の技法を根幹として、プレミアム酒や音楽を聴かせた日本酒など、新たな酒造りにも積極的に取り組まれており、2008年からは海外販売にも注力されています。
『IMABARI HERITAGE 1831』プロジェクトは、弊社オリジナルの贈答用日本酒の第二弾企画について、八木酒造部の八木伸樹社長にアドバイスを伺ったことをきっかけに始まりました。
弊社が作りたい日本酒のパッケージや瓶などのアイデアを持ち寄って意見交換していたその打ち合わせの中で、以前から温めていたという「プレミアムクラスの日本酒」の構想が八木社長から語られたのです。そのお話をきっかけに、企画は八木酒造部様の新商品開発へと大きく動き始めます。
提案と対話を重ねて形になった「IMABARI HERITAGE 1831」。今回は、その誕生までのプロセスをご紹介します。
ふと口にされた構想から企画が動き出す
弊社の前身である原商会時代からお取引をいただいている八木酒造部様とは、長年に渡ってラベルをはじめ、各種資材や段ボールなど、さまざまなご依頼をいただいてきました。
2024年2月頃、弊社が創立100周年を記念して制作した自社オリジナル日本酒『眞十郎』に続く第二弾として、贈答品として活用できる日本酒を企画。そこにアドバイザーとして八木社長に参加していただくことになりました。
「ハラプレックスさんが作られた日本酒『眞十郎』は以前から知っていました。非常に印象に残るパッケージで、当時は別の酒造メーカーで作られたものでしたが『これはやられたな』と感じたほどです。シンガポールの酒販店で実際に見かけたこともありました」
――さて弊社でのミーティングの中で、以前からプレミアムクラスの日本酒をつくりたいという構想をお持ちだったと伺いました。八木社長はどのような背景から、そのようにお考えになったのでしょうか。
「日本酒は、ある程度限られた価格帯に商品が集中しており、贈答用として選べる商品の幅もそれほど広くないと感じていました。海外のワインなどと比べても、価格は比較的抑えられています。
そのため大切な方へ『心からのお祝いや感謝を伝えたい』と考えたときに、その思いを伝えるにふさわしい日本酒がまだ少ないことに、以前からマーケットとしての可能性を感じていました。八木酒造部としてそうしたニーズに応えられるプレミアムな商品を開発できないか、そんな考えが以前から漠然とあったのです」
――弊社との打ち合わせを重ねる中で、その構想をふと口にされた印象を受けました。
「具体的にどのような商品にすれば良いかまでは整理できていなかったのですが、ハラプレックスさんとのミーティングでさまざまなアイデアに触れる中で、それまで温めていた構想と今回の企画がつながった感覚があり、プレミアム商品の構想をお伝えさせていただいたのです。原社長からもそれならぜひ一緒に取り組んでみませんかとの声かけで商品開発を進めることになりました」
提案を重ねながら、価値の伝え方を形にする
――商品開発を進めるにあたり、ボトルや箱について、当初から具体的なイメージやご要望はお持ちだったのでしょうか。
「私から『こうしてほしい』といった具体的な要望があったわけではなく、まずはハラプレックスさんからの案を見せていただきながら方向性を絞っていく、という進め方でした。
さまざまなご提案を目にする中で、『こういうお酒にしてはどうか』というイメージが少しずつ明確になっていきました。印象に残るデザインに想像が掻き立てられ、以前から考えていたことがつながって、次第に商品の方向性が見えてきました。十分に時間をかけて検討できたからこそ、最終的に納得できるものにたどり着けたのだと思います」
弊社では八木社長との対話を踏まえ、複数の方向性からパッケージデザインを提案。意識したのは、海外販売やインバウンド需要も視野に入れた「日本らしさ」です。
その中でご興味を持っていただいたのが、組子(くみこ)をモチーフにしたデザインでした。
組子は、細かな木材を組み上げて幾何学的な文様をつくる、日本の伝統的な木工技法。今回のデザインでは、基本となる三角形から、さまざまな文様へと展開していく特徴に着目しました。
一つひとつの基本形を積み重ねることで多様な文様が生まれる構造を、八木酒造部様が受け継いでこられた歴史や伝統、酒造りの技術の積み重ねと重ねています。また、「酌み交わす」の「くむ」や、「組み立てる」「一つにまとめる」といった意味も込めました。
――ご提案させていただいた複数のデザイン案の中から、組子をモチーフにした案を選ばれた決め手は何でしたか。
「最初に拝見したとき、窓が開いているようなデザインに新鮮さを感じました。これまであまり目にしたことのない表現でしたし、意匠としても美しい。何より和の趣があり、日本酒にとてもふさわしいデザインだと感じました。第一印象から、強く惹かれるものがありました」
「日本らしさ」から「今治らしさ」へ
――弊社からは日本らしさをご提案しましたが、このパッケージデザインをきっかけに「日本らしさ」から「今治らしさ」がコンセプトになっていきました。
「海外販売やインバウンド需要だけでなく、造船業をはじめとする海事産業が盛んなこの今治では、企業間の贈答品としても採用される商品にできるのではないか。そうした意見が打ち合わせで出たことで、『日本らしさ」から「今治らしさ」という視点が次第に強くなっていきました。その流れでハラプレックスさんが海事都市・今治を表す要素として、船の航跡をイメージしたシンボルマークを制作してくださり、組子柄と組み合わせたデザインをご提案いただいたことで、日本の伝統的な意匠と、今治という土地とのつながりが表現されました。これが商品名にもつながるきっかけになりました」
基本となる三角形から多様な文様へと展開していく組子の特徴を生かし、箱を閉じた状態と開いた状態でパーツの重なり方が変わることで、異なる組子柄が現れるように設計
箱を開いたときに、
外箱とボトルそれぞれにあしらったホログラムが
自然に揃って見えるよう、位置関係を調整しました。
紙質や中に入れるしおり、
箱内部の空間についても、
サンプルを確認しながら仕様を詰めています。
――商品名決定までの流れを振り返っていただけますか。
「私には以前から漠然と『今治を象徴するようなお酒を作りたい』という思いがありました。この海を想起させるデザインが生まれたことで、私の中で商品としての方向性が明確になったんです。そこでハラプレックスさんから複数の商品名の案をご提案いただき、最終的に『IMABARI HERITAGE 1831』を選ばせていただきました。ちょうどその頃、日本の『伝統的酒造り』がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、『HERITAGE』という言葉が、受け継がれてきた文化や伝統という意味でも、この商品に合っていると感じたからです」
――海外への展開や輸送も含め、実際の商品として仕上げていく過程での対応について、どのように感じられましたか。
「私からは、海外展開にあたって確認してほしい点や、輸送時の耐久性について要望をお伝えしました。実際の製造過程でも、輸送に耐えられる強度の確保や、輸出可能な印刷インキなどの制約があったと聞いていますが、他にも私の目に触れないところで多くの検討や試行錯誤を重ねていただいたのだと思います。パッケージを保護するための専用ダンボールも用意していただき、最終的にはそうした点もきちんと整理された状態で仕上げてくださいました」
――完成したボトルやパッケージを初めてご覧になって、どのように感じられましたか。
「現物を最初に見たときは感動しました。想像していた以上に、質感や雰囲気がありましたから。贈答品として受け取られた方にも『すてきな物をいただいた』と感じていただけるような、特別感のある商品に仕上がったととても感謝しています。外箱についても、Vカットによる角のシャープな仕上がりなど、随所にこだわりが感じられました」
Vカット加工によってシャープに仕上げた外箱
完成後に広がった「特別な商品」への反響
――完成品を目にした社員の皆さんはどのような反応でしたか。
「この商品について細かく説明したわけではありませんが、社員にも『これは特別な商品なんだ』と自然に伝わったようです。というのも、保管や管理について特に指示を出していないのに『このお酒は直前まで冷蔵庫から出さない』といった特別な扱いを、社員たち自身で考えてくれていました。商品そのものから、普段の商品とは違うものだということを感じ取ってくれたのだと思います」
――完成後には、今治市役所で『IMABARI HERITAGE 1831』の完成発表会が開催されました。その後の周囲からの反響はいかがでしたか。
「このようなPRの機会を持つことはあまりなかったのですが、今回は特に地元からの反響が大きく、新商品についてさまざまな方からお声がけをいただきました。これまでにない大きな反応でしたので、商品について発信していくことの大切さも改めて実感しました。
また、完成発表会についても市長や市役所、関係者の調整なども含めて全てハラプレックスさんが調整してくださって実現していただきました。当日は、私どもは商品を持参するだけというところまで事前の準備を整えていただき、大変助かりました」
――発売後の売れ行きはいかがですか。
「想定以上に反響があって驚いています。当社では、新商品は静かなスタートから徐々に認知され、販売につながっていくことが多いのですが、この商品は発売当初からまとまった動きがあり、その後もコンスタントにご購入いただいています。高価格帯の商品であることを考えると、非常に良い反応をいただいていると感じています」
IMABARI HERITAGE 1831を一つの頂点に。次の展開へ
――『IMABARI HERITAGE 1831』をきっかけに、今後どのような商品展開をお考えですか。
「この商品を頂点として、中価格帯からプレミアムクラスまでの商品をより充実させていきたいと考えています。ほかの商品についてもパッケージを見直しながら、八木酒造部全体としてのブランドイメージを高めていきたいですね」
――最後に、今回のプロジェクト全体を振り返って、総括をいただけるでしょうか。
「本当にゼロの状態から話し合いを始め、2年ぐらいの間、何度も協議を重ねながら、根気強くお付き合いいただいたことに感謝しています。さらにパッケージが完成して終わりではなく、その後の販売プロモーションやアフターフォローまで、今も現在進行形で支援していただいていて、本当に心強く感じています。」
航跡をモチーフにしたシンボルマークが特徴







